透析患者さんのかゆみについて 

1.はじめに

寒い時期になるとお肌が乾燥し、痒みが出ることはありませんか?
透析患者さんは特に水分制限などで肌が乾燥しやすく、かゆみを伴う事も多いです。
たかが、かゆいだけ、ほっといていい。そう思われますか?
強い痒みは睡眠障害やうつ状態を起こすだけでなく,心臓や血管の病気の発生にも関連し,
死亡リスクも上昇させる重大な合併症であることが研究によって明らかになっています。
今回は、透析患者さんに多いかゆみと対策についてお話しします。

2.透析患者さんに多いかゆみとその原因

透析患者さんを対象に行われたある調査では、73%の患者さんにかゆみ経験があり、そのうちおよそ40%の人に強い症状があったと報告されています。
では、かゆみの原因は何でしょう?
透析患者さんにかゆみが起こるメカニズムははっきりとは分かっていませんが、複数の原因が関わっている事が多いです。
皮膚の乾燥や尿毒素(体内に溜まった老廃物)、透析治療の影響など、複数の原因がかかわっていると考えられています。

主な原因を下記にあげてみます。
・皮膚の乾燥、また乾燥により痒みを感じやすくなっている
・ひっかくことで湿疹ができている
・尿毒素が体にたまる
・血中カルシウム、リン濃度が高くなる
・血中副甲状腺ホルモンの濃度が高くなる
・痒みを感じる神経を刺激する物質が過剰につくられる
・痒みを誘発する物質の血中濃度が高くなる

また、透析患者さんに多い皮膚トラブルとして診断されたもので、最も多いのが皮脂欠乏症・皮脂欠乏性湿疹、次いで慢性腎臓病関連掻痒症という結果があります。
いずれの疾患もかゆみが症状として出現します。

健康な皮膚は、表面にある角質が水分の蒸発や外からの刺激から守るようになっています。皮脂や汗による水分が不足して皮膚が乾燥した状態になると、皮脂欠乏症と言います。乾燥していると角質が剥がれて外からの刺激(暖房、入浴、衣類の摩擦やしめつけ等)を受けやすくなり、かゆみが出てきます。
この状態でひっかく事によって炎症が起き、湿疹を起こしてしまった状態を皮脂欠乏性湿疹といいます。
かゆくて皮膚をかいてしまうと、それが原因でかゆみがさらにひどくなる、という悪循環に陥ります。

かゆみが続くと睡眠障害を引き起こすなど、生活の質を著しく低下させてしまいます。かゆみは透析の合併症として、軽視せずに、肌を乾燥させないように対策をしたり、保湿のために外用薬を塗ったりするなど適切な治療を行う必要があります。かゆみを感じたら我慢せずに、かかりつけの透析施設の医師や医療スタッフに相談しましょう。

3.かゆみの対策

かゆみを抑えるための基本は「乾燥対策」と「保湿」です。周囲の湿度を保つ、肌に刺激を与えない、保湿剤を塗り肌の潤いを保つなど、自分でできる対策をぜひ取り入れてみてください。

(1)以下の外的刺激をあたえない
 かく、しめつける、ゴシゴシこする
 熱すぎるお湯でのシャワーや入浴(40℃以下が適正温度)
 シャワーの勢いが強い
 洗浄力が強い洗浄料を使う
 部屋の湿度が低すぎる
 エアコンや扇風機の風によく当たる
 肌が清潔でない

(2)リンに注意する
リンを多く含む食品を控える。
また、リンを下げるお薬は食前、食中、食直後など、内服時間を間違うと効果が弱くなるので、指示通りに内服しましょう

(3)保湿する
こまめに保湿剤をぬる
ぬる時はてのひらでやさしくぬり広げる ※こすらないこと!
適切な量の保湿剤をぬる

◆適切な保湿剤の量とは?

必要に応じて、炎症を抑える薬を使うこともありますが、日々のスキンケアを適切に行って、皮膚のバリア機能をサポートするかゆみ対策を行うことが大切です。かゆみ対策は今日からでも出来ることが多くありますので、ぜひ実践してみてください。

関連記事

  1. 災害時の透析患者向け非常食について

  2. Withコロナ時代 運動不足になっていませんか?

  3. 皆で力を合わせて患者さん、大切なご家族を守りましょう。

  4. 感染症専門医に来て頂きました!

  5. 当院の水質管理の取り組み

  6. 2020年12月メニュー

投稿月で探す

最近の記事

PAGE TOP