2021年4月に述べたように血液透析を続けていると、血液中のリンが増えてきやくなります。リンが増えると身体のホルモンバランスが崩れ、骨が弱くなり、心臓や血管の石灰化が進み寿命を縮めます。これを防ぐために食物中のリンを制限して頂くお話をしますが、タンパク質は健康な生活に必須なので、リンの十分なコントロールのためには、お薬の力を借りることが多くなります。
30年程前まではアルミゲルというお薬が使われてきましたが、多くの量を長く使うと、骨や脳、皮膚などに沈着する可能性が指摘され使用が中止されました。その後、主に炭酸カルシウムや酢酸カルシウムが使われましたが、血液中のカルシウムが高くなりやすく使用に限界がありました。その後ペリシットという高脂血症の薬が有望といわれましたが血小板が下がることがありやはり使えませんでした。そして現在はホスレノール、キックリンあるいはリオナ、ピートルといったリンを吸着する薬が主流になっています。
事情はかなり改善してはいますが、便秘や鉄の過剰などの問題が残っておりました。
そこで本年9月に入って新しいリンを下げる薬が認可されました。テナパノール(フォゼベルTM)というお薬で、来年くらいには一般に使いだせるといわれています。いままでの薬とは働き方がすこし違い、腸上皮細胞のナトリウム吸収を抑え、水素濃度を高めることで、腸の細胞間からのリンの流入を抑えるというタイプの薬だそうです。ですから便が緩くなる可能性があり排便調節が必要になるかもしれません。新しいお薬は使ってみて思いがけない副作用がでることもあるので慎重に取り入れる必要がありますが、うまく使えると患者さんにとっては朗報になると思って期待しています。