新型コロナウイルスは、こんなところまで影響した!

—透析用血液回路の供給不足による海外製代用品血液回路の使用—

血液透析を行うために様々な、血液透析用医療機器・消耗品が必要となります。血液透析に欠かせない消耗品の中でも代表的な材料として、ダイアライザー(腎毒性成分や水分の除去する過フィルター)・血液透析用回路(血液をダイアライザーに通すためのチューブ)抗凝固剤(ヘパリン)(血液を体の外で循環させるため血液凝固の防止するための凝固薬)穿刺及び留置針(血液を体の外に取り出し戻すルート針)など有ります。

今回、ベトナムの血液回路製造工場での、新型コロナウイルス感染者発生に伴い、日本製のオリジナル血液回路が供給不足となり、約4ヵ月間海外製代用品血液回路の使用を経験しました。
そこで、消耗品である血液透析用回路について考えてみます。

「全国透析用血液回路の安全対策の取り組み」

はじめに、全国透析用血液回路の安全対策の取り組みについて、振り返ってみます。
2001年透析医療における安全操作の基準である「透析医療事故防止のための標準的透析操作マニュアル」を基本とした取り組みがなされ、2002年4月「全ての接続部をルアーロックの設置が義務化」となり、透析用血液回路にも安全性、操作性が要求されるようになりました。 (図1)
新たなパーツの開発が進み、商品・サービス供給が広がり、各々の医療機関においてオリジナルの透析用血液回路が提案され、その結果として、約3500種類以上の規格が存在しました。
2003年「安全な血液療法のための標準的血液回路の提案」なされ取り組みが進む中、大きな問題として明確になったのは、東日本大震災により透析用血液回路の製造・流通が困難となり、血液回路の不足となり、初めての代用品の血液回路を使用することとなった事は、今でも記憶に新しいのです。また、日本の血液回路メーカーの製造ラインの拠点は海外で行われていることから、 流通に問題が起きた場合、二次的な医療事故につながる可能性も考えられるとして、標準的透析用血液回路への取り組みが進められてきました。
透析装置の自動化に伴い透析用血液回路の規格は、1500種類程度まで減ったとお聞きしておりますが、海外用の血液回路の規格数と比べると格段の数の違いがある事は、まだまだ、問題意識を持つべきだと考えます。

「海外製代用品血液回路の使用となった経緯」

今回、供給不足となった血液回路は、「透析用血液回路の安全対策の取り組み」の中でも懸念されていました、「流通に問題が発生した」と考えます。国内において、透析用血液回路の使用本数は、年間約5200万本と言われています。 代表的な血液回路製造メーカーは6社(図2)、全て海外での工場で製造されています。
供給不足となった血液回路は、日本の国内において約半数を供給している日機装株式会社のベトナムメディカル工場が、新型コロナ感染者発生に伴い一時操業停止となり、日本製の血液回路が供給不足となりました。
臨時対応として準備された血液回路は、これまで使用していた血液回路とは大きく違った海外製の規格となりました。(図3・図4)
接続部品数が多い・クランプ箇所が多い・滅菌方法の違い・チューブのサイズおよび硬さの違いが有り、その影響で透析装置のモニターリングが出来ない箇所が生じ、止む無く治療モードの変更・ダイアライザーの変更となりました。 これまでの手慣れた装置セティングとは異なり、戸惑いも見られ、一つ一つ注意深く準備が必要でとなりました。(図5・図6)






海外製代用血液回路の使用経験

–透析監視装置への準備と接続(セッティング)–

透析監視装置は、自動化が進み自動プライミング装置が搭載されている。事前準備として、血液回路とダイアライザーをつなぎ合わせ、充填液が漏れないようにワンタッチクランプを閉め透析装置へ接続しておく(セッティング)。
血液回路の開放部分や接続箇所が出来るだけ少ない方が、ミスは少ないことは言うまでもありません。日本製血液回路では、12箇所の開放部分や接続箇所があり、海外製回路は17箇所であり、部品点数も多く複雑な血液回路となりました。
スタッフからは、「頭の体操をしながら準備しています。」の前向きなコメントが聞かれ、1週間もすると慣れてきましたとの頼もしい声が聞かれました。
2021年11月~2022年3月までに、述べ1500本の海外製代用血液回路を使用経験しました。過去、血液回路の変更を行うことは、操作性の面から否定的な意見もありましたが、今回の複雑な血液回路の使用を経験したことで、今後、自然災害などで回路の変更が余儀なくされても、当院スタッフは、スムーズな対応が出来ると確信しました。まだまだ、日本の血液回路は海外で製造されいます。国の情勢が変われば、今回と同様な事態になることが懸念しておりました。そんな中、九州において、血液回路の製造拠点が建設されるニュースが有り、血液回路の供給に大きな進展だと期待します。

九州(宮崎)で血液回路生産工場が建設される

- -血液回路の供給に大きな進歩と安心- -


プレスリリース > 日機装株式会社 > 宮崎に透析用血液回路を生産する新工場を建設
これまで、透析用血液回路の取り組みは、さまざまな観点より行われておりました。血液回路の製造は、コスト面から考えると日本での製造は有り得ないと思っておりました。今回、血液回路供給不足により、九州(宮崎工場)での製造が決定されたことは、あらゆる災害時に血液回路の供給対応が大いに期待できると考えます。
シンプルで安全な統一された血液回路の製造・安定供給を願っております。

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