窒素、リン酸、カリウムは農作物の肥料として小学校の理科の授業にも出てくる聞き慣れた物質です。
ところが、腎不全の患者さんにとってこれらの物質は悪者の代表のように扱われています。
「過ぎたるは猶及ばざるがごとし」で、これらの物質の適量を体に残すべく調整するのが腎臓の役目です。
腎臓が動かなくなると、昔は尿毒症になって命の危険にさらされていましたが、透析療法ができるようになって生命予後は格段によくなりました。
しかし、透析をしても身体の中にあるリンの多くは細胞の中にあり、細胞の外にある血清から透析で取り除けるリンの量はわずかです。
40年ほど前、透析の治療が始まったころは、体にリンがたまることでビタミンDという食べ物からカルシウムを体に取り込む栄養素がうまく働かないために、身体は自らの維持に必要なカルシウムをまさに自分の骨を削って使っていました。
その後、活性ビタミンDがお薬として使われるようになり事態は改善しました。
けれども、リンを下げる事は難しく、いくつかの薬が使われてきましたが、いまだに問題は完全には解決できていません。
今では、リンがたまって身体の動きが歪んだ状態では骨だけでなく、血管や心臓などの循環器にも悪影響が出ていることがわかっています。
安定した透析生活を続けていくためには適度なタンパク質をとりながら如何に無駄なリンを避けていくかが食生活を考えるうえで重要なポイントになります。